「アプリを作りたいんです」というご相談を受けて、30分ほどお話を聞いたら、実際に必要だったのはスマホでも見やすいWebサイトだけだった、ということがあります。DX(デジタルトランスフォーメーション。デジタル技術を使って業務や事業のやり方そのものを変えていくことを指す言葉です)という言葉が広まってから、こういう相談は増えました。目的よりも先に「アプリ」「システム」という手段が決まってしまっていて、話を聞くほど本当に必要なものとズレていく。今回はそういう、DX支援の現場でよく見かける失敗パターンを2つ取り上げます。
私は名古屋市中川区を拠点に、フリーランスのエンジニアとしてWeb制作やシステム開発、業務自動化のご相談をお受けしています。これまで飲食店や小売店、卸売業、士業事務所など、業種も規模もさまざまなお客様のお話を伺ってきました。今回の内容は、そうした現場でのやり取りをもとにまとめたものです。

「アプリを作りたい」から話が始まると、要件がズレやすい
私自身、実際にお客様から「アプリを作りたい」と相談を受けたことがあります。このとき私は、いきなり見積もりの話をせず、まず「このアプリで、お客様に一番伝えたいことは何ですか」「問い合わせが来たら、どなたがどう対応する想定ですか」と一つずつ聞いていきました。すると話しているうちに、お客様ご自身が「そういえば、伝えたいことと簡単な問い合わせ対応ができれば十分かもしれません」とおっしゃったのです。
アプリにはアプリの良さがありますが、iPhoneやAndroidのストアで公開するには審査を通す必要があり、開発の初期費用もWebサイトより高くなりがちです。それだけの負担をかけてまでアプリ化する必要があるかは、目的次第です。私はこのとき、正直に「アプリでなくてもWebで実現できます」とお伝えして、アプリ化は止めました。売上になるとしても、お客様にとって不要なものは勧めない。これが私の基本的なスタンスです。
なぜこの相談が多いのか
先ほどのお客様との会話を振り返ると、最初は「DXを進めなければ」という焦りから、アプリという具体的な手段に先に飛びついていたようでした。目的を一つずつ言葉にしていく中で、手段と目的が入れ替わっていたことにお客様自身が気づかれた、という流れです。DXという言葉自体がやや抽象的で、何をすればいいか掴みにくいからこそ、こうして目的を一緒に言葉にしていく最初の会話が、実はかなり重要なのだと思います。

予算がついたからと、一度に大きなシステムを作ろうとして止まる
もう一つよくあるのが、DX関連の予算が確保できたタイミングで、業務全体をまとめて一気にシステム化しようとするケースです。要件が最初から大きいと、開発期間も費用も膨らみ、途中で優先順位が曖昧になっていきます。結果として、完成はしたけれど現場ではほとんど使われない、という状態になりやすいのです。
ケースによりますが、私は「まず一番手間がかかっている作業を一つだけ自動化する」ことをお勧めすることが多いです。小さく作って現場で使ってもらい、実際に手が空いた時間で次を考える。この順番のほうが、結果的に定着しやすいというのが、これまで見てきた実感です。

「小さく始めて育てる」を、自分のホームページで体験した話
実は私自身、この「小さく始めて育てる」という考え方を、システム開発だけでなく自社サイトの運用でも体験しています。自社サイトでSEO(検索エンジンで上位に表示されやすくするための対策)に取り組んだとき、記事の入稿を毎週続けていました。最初の数ヶ月はアクセス数がほとんど変わらず、正直「本当に意味があるのか」と思う時期もありました。それでも記事を書くこと自体はやめず、良い時も悪い時も淡々と積み重ねた結果、半年後には月間アクセスが4,500件から21,000件まで伸びていました。何か一つの大きな施策を打ったわけではなく、地味な入稿を続けたことが結果につながった。これは私自身の実体験です。
この体験は、お客様にDXの話をするときにもそのまま使っています。「システムも同じで、公開した瞬間に劇的に業務が変わるわけではなく、使いながら少しずつ調整して初めて効果が出るものです」とお伝えすると、「なるほど、うちのホームページもそうでしたね」と、ご自身の経験と重ねて納得してくださる経営者の方が多いです。抽象的な理屈として伝えるより、自分が実際に手を動かして得た数字と実感を話すほうが、伝わり方はまったく違うものだと感じます。
名古屋で中小企業がDX支援を頼む場合、費用はいくらが目安?
費用は「何を作るか」よりも「どこまで作り込むか」で大きく変わります。目安として、次のように考えると判断しやすくなります。
- 小さな業務自動化(毎日の報告作業を自動送信にする、決まった作業をワンクリックで実行できるようにするなど):数万円〜数十万円台で収まることが多い規模感です。
- 複数の業務やシステムをつなぐ連携(在庫管理と受発注をつなぐ、複数部署のデータを一元化するなど):数百万円台になることが多く、期間も数ヶ月単位で見ておく必要があります。
もちろんこれはあくまで一般的な相場感であり、業種や既存システムの状態によって変わります。ご自身のケースがどちらに近いか、次の問いを一度書き出してみてください。
- 今、一番時間を取られている作業は何か(1つだけ挙げるとしたら何か)
- その作業は、誰か一人が担当すれば済むものか、複数の部署・システムをまたぐものか
- その作業を自動化・効率化できたら、空いた時間で何をしたいか
私がお勧めしているのは、最初から全部を見積もりに含めるのではなく、まず一番困っている作業を一つ挙げてもらい、そこだけを対象に見積もりを出すやり方です。効果を確認しながら次に進めるので、予算のコントロールもしやすくなるはずです。
失敗しない制作会社・エンジニアの選び方
判断軸は主に二つあります。
- 目的を先に聞いてくれるか:最初から「アプリで」「このシステムで」と手段を決めつけず、何のためにDXを進めたいのかを聞いてくる相手かどうかは、大きな判断材料になります。相談の場で「なぜそれが必要だと思われましたか」と聞かれるかどうかは、一つの目安です。
- 公開後・導入後も関わり続ける前提になっているか:作って終わりではなく、育てていく前提で提案してくれるかどうかも見てほしいポイントです。見積もりの中に、公開後の修正対応やサポート期間が明記されているかを確認してみてください。
私自身は、公開から3ヶ月後まではデザインの修正や文言の修正を何度でも受け付けています。実際に作ってみると、想像していたものと少し違う、ということは起こり得るからです。その前提を最初から用意しておくことで、依頼する側も安心して相談できるのではないでしょうか。
まとめ:まずは「一番困っている作業」を一つだけ書き出してみる
DX支援と聞くと、何か大がかりなことを始めなければいけない気がしてしまいますが、実際は「今、一番手間がかかっている作業は何か」を一つ書き出すところから始めれば十分です。それだけでも、相談したときの会話がぐっとスムーズになるはずです。
名古屋市中川区を拠点に活動していますが、対応エリアは名古屋市内に限りません。これまで様々な業種のお客様とお話ししてきた経験を踏まえ、アプリ化すべきか、Webで十分か、システムをどこまで作り込むべきか、判断に迷っている段階でもご相談に乗ります。気になることがあれば、一度お話を聞かせてください。

コメント